日 本 刀 の 歴 史

吉野朝時代(1334年~1393年)

 武家の盛衰と運命を共にするのは刀鍛冶の宿命です。 鎌倉幕府の崩壊、南北両朝の争いによる国内の疲弊は必然的に刀匠の技術低下を招きました。 つまり、相州鍛冶の衰退、戦火を逃れて地方に分散して行った山城鍛冶や延寿鍛冶の南朝方敗戦による中断等はその好例です。  前の時代のような風格の高い作柄は少なく、実用を主眼とした長寸の身幅の広い、切先の延びた力感の強いいわゆる野太刀とよばれる1m以上にもおよぶ長寸の物が造られ、今日見る大磨上無銘の多くはこの時代の作品です。 これは蒙古襲来によって彼等の使用した青竜刀の長大さに対する驚異と模倣、それに前代までの集団戦が再び個人戦に変ったので、これに即応して身幅、焼幅ともに広くなり、切先は延び、少々の"刃こぼれ"が生じても、研磨によって何度でも使用できるような造り込みに改良されたのです。  この時代あるいは二代目たちが活躍した時代です。特に備前国に相伝備前が栄え、美濃国には志津三郎兼氏によって樹立された美濃伝が、その門葉である直江志津とよばれる刀匠達の活躍により、確立されました。 山城国   相州伝系・・・・・信国、長谷部国重、国信、国平   三 条 系・・・・・吉則、平安城長吉、達磨重光 大和国   手掻系・・・・・・包永、包次   尻掛系・・・・・・則長、則弘   保昌系・・・・・・貞清、貞行 相模国   相州伝・・・・・・秋広、広光、広正 美濃国   志津系・・・・・・兼友、二代兼氏、兼次、兼信   金重系・・・・・・二代金重、金行 備前国   相伝備前系・・・・二代兼光、義光、義景、基光、政光、長重、元重、二代長義   長船系・・・・・・三代長光、三代景光、家光   鵜飼系・・・・・・三代雲次、雲重   大宮、吉井系・・・助盛、盛景、師景、為則、景則 備中国   青江系・・・・・・後代貞次、次吉、次直 備後国   三原系・・・・・・正家、正広、正光 周防国   ニ王系・・・・・・清綱、清貞 西 国   筑前国・・・・・・安吉、国弘、吉貞、盛高   肥後国・・・・・・国時、国資、国清   薩摩国・・・・・・安行、行次、安家   土佐国・・・・・・吉光 貞宗三哲   山城信国、備前国元重、但馬国国光